【糯米酒】
 もち米で仕込んだ自前の酒とは「糯米酒(ヌォミィチュウ)」というものだ。(糯=もち)
 各家で仕込んであるらしく、承啓楼のある家の主人(小学校の先生だと言っていた)が招き入れてくれた台所でそれを見せてくれた。
糯米酒  はじめはお茶をご馳走になっていたのだが、奥の棚から使い古したボトルを持ってくると、小さめのグラスに少し注いでくれる。ニッコリと笑って指し出せれたそれはお酒だった。
 「糯米酒だ。」と教えてくれた主人は、次に隅の暗がりにある甕(かめ)の封を開け出した。中には透き通る琥珀色の液に浸かるお米が見える。甘いお酒の香りがわずかに辺りに漂うと、すばやく甕の封は戻された。これはまだ、出来上がり前のようだ。
 
 改めて卓に着き、小グラスに注がれていた糯米酒をゆっくり口に運んだ。甘く癖の無い味と香り。アルコールも強いものではない。なじみの薄い独特の香りや、きついアルコールなどが多い中国独自のお酒(ビール以外)の中で素直に“おいしい”と感じたお酒の一つでした。
旅人彩図 『もち米で自前の酒?』 戻る