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No.43 ネズミ警報発令チュー(2) |
2004.11.
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屋根裏に上がると見事に一匹のネズミが罠カゴの中にいた。ガサガサと不安に怯えて騒ぎ立てるネズミをカゴごと屋根裏から下ろす。
調べてみると家ネズミの一種の「クマネズミ」のようだ。なかなか間近に見ることがないネズミを、こうやってカゴに入れて見てみると案外可愛らしい。
とりあえず捕獲してみたものの、その先このネズミをどうするかは実はしっかり考えてなかった。可愛らしいといえど飼育するつもりは全く無いので、逃がすか、殺してしまうかということになる。
以前に出没した小型のハツカネズミは「ゴキブリホイホイ」の粘着シートにベタリと張り付いた状態で捕まえた。
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シートの粘着力は思いの外強くて小さなハツカネズミを剥がすことができず、どうしようか決めかねていたら、少し目を離した隙に外に放置してあったゴキブリホイホイごと野良ネコに持っていかれたということがあった。
今回もそのときと同じように野良ネコなどの餌に‥とも思ったが、罪も無く罠に掛かった上に生餌にされては少し気の毒だ。とはいえ家ネズミだから、そこらで放せば近所の家に入り込むかまたここへやってくる可能性がある。
〔しょうがない、捕獲した者の責任でもあるから、どこか人気の少ない山の方へ逃がしに行くか‥。〕
そう観念して、助手席下にネズミを乗せて車を走らせた。幸い田舎なので人気の少ない田畑と林が広がる所までは車で10分とかからずに行けるが、これが都会の真ん中でしかも車を持っていないとなったら面倒極まりないだろう。
民家が全く周辺に見えないという程の場所ではないが、田畑と小川と林が広がる最寄の場所までやってきた。車を降りると、秋らしい野の薫りと静寂に包まれる。
小川の堤防沿いの道にネズミカゴを置き、カゴの蓋を開け放して待った。
ネズミはカゴの奥ででピタリと動きを止めて様子を伺うと、次の瞬間、サッと素早くカゴを走り出た。タタタターッ、と後ろ両足で小刻みに跳ねる様にして10メートルほど砂利道を直進すると、そのまま振り返ることもなく道脇の草むらの中にパッと姿を消した。
わずかなその時間が過ぎ去ると、何事もなかったように再び静寂が訪れて辺りでは秋の風にススキの穂がただ揺れているばかりだった。
走り去るクマネズミの後ろ姿はテレビで観るカンガルーの走り方とよく似ていて、愛嬌あるその顔と共に私のまぶたにしばらく焼き付いているのでした。
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